未来の自動車産業の仕組みを予想してみる

      2018/08/08


「自動車産業って、どうやってお金を稼ぐんだろう?」
「自動車の製品開発は、どんなふうに進んでいくのかな?」
「就活で自動車業界を受けるけど、将来性が不安…」

この記事は、そんな方へ向けて書いています。

こんにちは、製造業コンサルタントのTEN(@02smwhere)です。

今回は自動車業界を歩んできた僕が考える、自動車産業の未来の姿を予想してみたいと思います。

本記事のまとめ
  • 現状の自動車の開発工程や販売モデルは終息を迎える
  • 走行距離などに応じたサブスクリプション型の課金形態に移行せざるを得なくなる
  • ハードソフト両面においてもアップデート前提での商品展開へとシフトしていく

本記事では、未来の自動車について長沼博之氏の”Business Model 2025”を参考に考えてみることにいたしましょう。

 

スポンサーリンク

新商品の概念やウォーターフォール型の開発手法が変わる

OOK82 gurafuwoyubisasu20131223 TP V

僕が新卒で働いていた自動車会社では、数年かけて一台の車をリリースするプロジェクトがほとんどでした。

まず、経営陣の方針と予算配分に基づいて、商品の企画からプロジェクトがスタートします。

そこから、具体的なコンセプトやデザインに落とし込まれ、エンジンやシャシーなど、ユニットごとに性能目標が定められていきます。
これらの目標を満たすために、先端技術の研究成果の中から、使えそうな技術を選定し、各パーツの性能を決定。
実際にパーツを開発した後に、組み立てて、性能のテストをします。

このように、自動車の開発では様々なフェーズを経て、製品が世に届けられます。

開発工程の詳細は、後ほど記事にしますね。

一般的には、自動車の開発サイクルは、製造業の中でも比較的短い部類に入ると言われています。

では、僕たちが毎日欠かさず使っている、スマートフォンはどうでしょうか。

先日、Apple社のイベントがあり、新型iPhoneが発売されました。

このようにiPhoneは、発売から10年経った今でも毎年欠かさずハードを進化させ、OSをアップグレードし、かつ日々マイナーアップデートも継続しています。

一方で、ほぼ同時期に新モデルを発売した、日産の電気自動車リーフはどうでしょう。

大幅なモデルチェンジとしては、初代リーフが発売されてから、およそ7年目の出来事です。
これまでにも、マイナーアップデートはありましたが、それも2回ほど。

開発や事業の規模が異なるため、自動車とスマートフォンを一概に比較することはできないかもしれませんが、それでも開発スピードが明らかに異なることは納得できると思います。

しかし近年では、テスラモーターズのように、オンラインによる機能追加や不具合修正など、購入後のアップデートを前提とした自動車の販売モデルが確立されているのも事実です。

自動車業界としても、いま一度、時間感覚を改めなければいけない時代に来ているのかもしれませんね。

昭和型の自動車産業構造の限界が見えている

日本という国は、製造業、ひいては自動車産業によって成り立っている国といっても過言ではありません。

ですが、そのビジネスモデルが根底から覆されようとしている。

僕たち日本人は、その危機感に少しでも気がつくべきだと思います。

自動車会社の新入社員には、必ずと言っていいほど数か月の工場実習があります。

多くの産業用ロボットと共に、工場の一部となって、ひたすら単純作業をこなしていくのです。

そのときは、ロボットの正確無比な動作と、現場の作業員の人たちの勤勉な働きぶりに、感銘を受けるのみでした。

OZP graindhibana1188 TP V

一方で、こう考える自分もいたのです。

“これから先、ロボットや人工知能だけで工場を回せるようになった時、この人達の仕事はどうなるのだろう?”

工場で人間が行う仕事が、機械によって完全に代替される未来が訪れた時、自動車の生産コストは下がるのかもしれません。

そして、これは工場だけではありません。

新モデルのプロトタイプを作る、図面を立体にする、様々な条件のテストデータを取得するなど…
言わば上流や、研究開発であっても、こういった業務の効率化は起こり得ることです。

スマートフォン産業と異なり、自動車などの製造業の様々な業務は、AIやロボットに代替される可能性が高いと思います。

なぜならば、精密機械ほどの繊細な動作を必要とせず、一定の習熟度が必要な単純労働が多く、作業員の人的リソースを大量に投入する必要があるためです。

こういった仕事は、まさに人工知能や産業機械の得意分野です。

つまり、機械に仕事を奪われるという事態が現実になっていくのです。

皆さんの周りにも、自動車関係の会社や、他の機械メーカーで働いている人はいるのではないでしょうか。

彼ら全員が職を失い、収入がなくなってしまうとしたら?

スポンサーリンク

ビジネスモデルの変化が新規参入のハードルを下げる

IpadIMGL1341 TP V

このように機械化が進むと、誰でも比較的簡単に商品開発ができるようになります。

つまり、固定費や研究開発費が少なくなり、初期投資額が下がるため、新規参入が容易になります。

新商品を一つ作るための限界コスト(≒商売を成り立たせるために、かけることができるお金)もゼロに近づいていくため、アップデートが頻繁に行われるようになります。

StockSnap ODUU0AZW4E

最近の例で言うと、宇宙産業でしょう。

僕が学生の時は、ロケット開発がしたいと思えば、JAXAやNASAに行くしか考えられませんでした。

昔の宇宙開発は、国家プロジェクトだったのです。

ですが、今はどうでしょう。

イーロン・マスク氏やジェフ・ベゾス氏、日本では堀江貴文氏によって、民間でも宇宙開発が行われています。

僕の母校ですら、宇宙開発企業の説明会が実施されているという現状です。

これは機械化によるものとは、ざっくり言うと少し異なるかもしれませんが、ビジネスモデルの変化により、新規参入が可能になったという意味では、良い例だと思います。

自動車会社の原点は、人々にモビリティを提供すること

PEZ86 torihazusaretabuhin TP V

これは僕個人の意見ですが、自動車会社のミッションは、人々にモビリティ、つまり移動手段を提供することです。

新しい自動車をお客さんに売りつけて、稼いで終わり、ではいけません。

また、燃費の良いエンジンを開発したり、電気自動車のインフラを整えるのは、あくまで手段であり、最終目的になってしまってはいけません。

ビジネスモデルの変化、ひいては機械化による人員削減や、電気自動車の普及によるエンジンからバッテリー・モーターへの動力源シフトにより、自動車の産業構造は大幅に変化していくことでしょう。

StockSnap ZDS3FNOZZI

また、ユーザーの考え方も変わってきています。

・一家に一台、自動車が無くても良い。
・必要な時に、カーシェアやレンタカーで済ませれば良い。
・駐車場代や税金もかかるし、ものとして所有することに魅力を感じない。


こういった考え方は、特にこれからを担う若い世代にとって、一般的なものです。

このような世代に対して、自動車を主体とした企業戦略を変えていく必要があります。

つまり、“自動車を買わせて所有させる”ことから、”移動手段としての車を提供する”ことへのビジネスシフトです。

ビジネスには、“インベーター理論”というものがあります。

・新商品が出るとすぐに購入して試すイノベーター(革新者)が2.5%
・流行に敏感で積極的に行動するアーリーアダプター(初期採用者)が13.5%
・慎重だがやや早く採用するアーリーマジョリティ(前期追従者)が34%
・新しいものに懐疑的で周囲の大多数の確証が得られてから導入するレイトマジョリティ(後期追従者)が34%
・残りの16%はラガード(遅滞者)で、流行や世の中の流れに関心が薄く、伝統的なところまで移行しないと採用しない


…というものですね。

これまではアーリーアダプターが利用し始めて、ライバルが参入してくるまで3年かかれば、成長期・衰退期もそれぞれ3年かかるのが通例でした。

しかし、現在では製品の普及から衰退までのライフサイクルが劇的に短くなっている、”ビッグバンディスラプション”と呼ばれる現象が起きています。

そのため、自動車会社は一刻も早く事態を重く受け止め、早急に対策を打って、昭和型の売り切り前提のビジネスモデルからの脱却を目指すべきなのです。

ユーザーにとって本当に便利な事業のみが生き残る


その結果、恩恵を受けるのはユーザーでしょう。

事業の繁栄と失墜のスピードが早くなっていく時代では、ある種の自浄作用が働き、ユーザーのニーズをきちんと汲み取って、サービスとして早急に展開できる企業でないと、生き残ることができません。

さらに、シェアリングエコノミーのような共有経済が行きわたった世界では、電気や水道などと同じように、常に公共性が問われることとなります。

そのため、モビリティを提供する自動車会社であるならば、現在の鉄道会社のような、社会の移動手段を支えるインフラとして認識して事業を進める必要があります。

その時に、これまでのような自社のエゴのみで開発しているような時間や、余計な人員を抱えている資金はなくなっていくはずです。

StockSnap I9KITUHMGZ

スマートフォンは、私達の生活を変えました。

それにより、ユーザーは常に最新技術に触れること、何かを他人と共有してコストを下げることについて、非常に感度が高くなっています。

“自動車なんて欲しくない、けど移動手段は欲しい”
“石油は枯渇するので、再エネ由来の電気で移動できると嬉しい”

このようなユーザーのニーズを満たすために、今後の自動車会社はパーソナルモビリティや電気自動車の展開が余儀なくされると思います。

所有しない自動車が一般的になると、企業はどのように利益を出していくか。

それは、常に最新の自動車を、社会インフラとして複数台シェアすることを前提とした、距離料金やユーザーランク別の課金モデルになっていく、と予想します。

・共有の駐車場などに自動車が停めてあって、誰でもいつでも利用できる。
・日々最新技術が発明される、電気自動車や安全装置のアップデートは、即座に反映される。
・乗った分だけ、料金を支払う。
・安全運転の実績のある人は、より安くなる。

…といったところでしょうか。

未来の自動車産業のあるべき姿を予感させられた

StockSnap VPSD8JT149

これまでの自動車産業では、様々なコストがかかっていました。

商品を開発するコスト、商品の情報作成するコスト、販売取引のコスト、物流のコスト、販売拠点でのコスト、最終的な破棄ためのコストなどなど。

全てのビジネスコストが下がり、ユーザーの考え方やニーズも変わる未来。

企業として売上を出すために、抜本的な産業構造の改革が必要とされています。

長沼博之氏の”Business Model 2025”は、自動車会社のみならず、今後変革を余儀なくされる企業で働く全てのビジネスパーソンに対して、未来の企業のあるべき姿を見せてくれるでしょう。

 

 - キャリア, データ分析